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川崎市、ヘイトスピーチに刑事罰を盛り込んだ条例を検討、の意味


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川崎市が、ヘイトスピーチに刑事罰を盛り込んだ条例を検討されているというニュースをみました

www.asahi.com

インターネット的に先にわたしの意見を書きます。

わたしの意見は、ヘイトスピーチは悪。ヘイトスピーチやるやつはバカ。というか残念。ちゃんと勉強して生きなおそう。

ただ、「ヘイトスピーチは悪」を大前提としたうえで、ヘイトスピーチを刑事罰をもって抑え込むというのには反対です。

これは、対抗言論で対抗するというのでもなく、良き日本人ならばヘイトスピーチを憎むもんだというコンセンサスをつくりたいという感じです。ヘイトスピーチを自然消滅させたい。

お花畑な考えでしょうか。今現実にあるヘイトスピーチは1個1個プチプチッと潰していかないといけないとは思います。

 ヘイトスピーチは2013年ごろから、東京・新大久保や大阪・鶴橋などで激化。川崎市でも公園を利用した集会やデモが繰り返された。16年にはヘイトスピーチ対策法が成立したが、罰則はなく、市は18年、ヘイトスピーチの恐れがあれば公園など公的施設の利用を拒めるガイドライン(指針)を、全国で初めて施行した。


おおっ。川崎市は、ガイドラインも定めていたのですね。知らなかった……。まずここでは、ごくおおざっぱに字句の解説をします。

  • ガイドライン・・・運用指針。なにかを縛る効力はないもの。
  • 条例・・・地区ごとに適用(今回は川崎市)される決まり。その地区の住民を縛る。
  • 法律・・・日本全国で適用される決まり。日本国民を縛る。上記引用中の罰則がないというヘイトスピーチ対策法は、法律です。
  • 憲法・・・国家権力を縛る。「表現の自由」という言葉は、まずここの言葉だという理解でよいです。

16年にはヘイトスピーチ対策法が成立したが、罰則はなく

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罰則がもうけられませんでした

朝日新聞デジタルの記事では、ヘイトスピーチ対策法とありますが、ネットではヘイトスピーチ解消法という省略が一般的のようですね。本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律、です。ここでは、ヘイトスピーチ対策法としておきます。

ヘイトスピーチ対策法には、罰則がもうけられませんでした。それはなぜなのか?

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こういうふうにもできたはず

それは、ヘイトスピーチを表現というかはちょっと横においておいて、表現を規制する法律をつくる場面は、「表現の自由」が問題となるからです。

表現の自由は、国家権力(今回は立法府)を縛る方向に働きます。

ヘイトスピーチ対策法の規制対象があいまいだと、たとえば年金デモみたいなものまでも規制するようにならないか

こちらのリンク記事は、2014年8月28日の記事でして、ヘイトスピーチ対策法制定前夜です。自民党は、ヘイトスピーチじゃないやつも一緒くたに議論しようとされていますね。

自民党は8月28日、「ヘイトスピーチ」の対策を検討するプロジェクトチーム(ヘイトスピーチPT)の初会合を開き、国会議事堂などの周辺や外国大使館付近での大音量の街宣やデモに対する規制も、ヘイトスピーチと併せて議論する方針を確認した。

緩やかになんでも規制して良いという法律をつくることは許されません。年金デモなどをヘイトスピーチとして取り締まるようなことがあってはならないのです。ただ本物のヘイトスピーチを野ばなしにすることも許されません。

このバランスをどこでとるか?というときに、「表現の自由」は、ヘイトスピーチ対策法をより限定する方向に働きます。

  1. 保護の対象は「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」だけとされ、ヘイトスピーチについても限定的な定義がなされました*1
  2. 罰則がもうけられませんでした。
  3. 禁止規定もおかれませんでした。
  4. 不当な差別的言動の解消手段は、「相談体制の整備」「教育の充実等」「啓発活動等」を通じて国民の理解と協力を得ることだとされました。

このヘイトスピーチ対策法に禁止規定が盛り込まれなかったため、現場では大変な苦慮をなさっています。

ヘイトスピーチの最前線 現場における苦慮 川崎市の先進的取組み

川崎市:ヘイトスピーチ

こちらは、川崎市のホームページです。本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく「公の施設」利用許可に関するガイドラインにすごい先進的な事例の紹介がありました。

http://www.city.kawasaki.jp/250/cmsfiles/contents/0000088/88788/gaidorainn.pdf

川崎市では、平成28年5月30日、公園内行為許可申請に対し「不当な差別的言動か
ら市民の安全と尊厳を守る」という観点から、全国初の不許可処分が行われています。

ちなみに平成28年6月3日がヘイトスピーチ対策法の施行日です。

ここの判断がすごいのは、「表現の自由」はここでも公権力(ここでは川崎市、行政府)を縛る方向で働くからです。

たとえば、川崎市の施設利用のガイドラインには「許可」「警告をしての許可」「条件付き許可」「不許可」という枠組みがあります。ここの条件付き許可をみていただきますと

条件付き許可
 不当な差別的言動が行われる可能性が高いが、具体的に明らかとまでは言えない場合には「ヘイトスピーチ解消法が定める不当な差別的言動を行わないこと」という条件を付した上で、許可処分を行うことができるものとする(川崎市市民館条例第5条)。

上記PDFの10ページ

不当な差別的言動が行われる可能性が高いだけでは、「不許可」にできないんです。 

すごくないですか?「可能性が高い」んですよ?これでも「不許可」にはできない。

なんかもう「表現の自由」ってなんなん?と思いませんか。「表現の自由」のイメージがだいぶ変わるんじゃないかと思います。

表現の自由は、公権力に対して働く

www.mm-nankanoffice2.com

最後に、最初にもどって、自分の意見を書きます。

ヘイトスピーチは悪。ヘイトスピーチやるやつはバカ。というか残念。ちゃんと勉強して生きなおそう。

ただ、「ヘイトスピーチは悪」を大前提としたうえで、ヘイトスピーチを刑事罰をもって抑え込むというのには反対です。真の予防は刑罰の威嚇や予告では達成できません。

ブログやTwitterで、またはデモなどで、言論でヘイトスピーチを封じ込めましょう。我々日本国民は、それができるんじゃないかとわたしは思っております。

*1:附帯決議において、第2条が規定する定義以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであり、本法の趣旨、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に鑑み、適切に対処することとの規定はもうけられました