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上野千鶴子先生の『情報生産者になる』を読んでいます

上野千鶴子先生の『情報生産者になる』を読んでいます。恥ずかしながら上野先生の本、最初の1冊です。

最近いろいろ思うところありまして、おもにブログ記事のことなのですが

  • 読者のかたに了解いただけるように、論理をぶっとばさないで書く
  • 先行する研究をもうちょっとちゃんと調べる

こういうことが大切なのかなと思うようになりました。

1つ目は、自分の悪いくせで、書いていて面倒くさくなるんですよね。ここまではわかるだろう!と。ちゃんとペルソナ(想定する読者)が練られていれば問題ないともいえるかとは思うのですが(あえてそう書いた場合)、たまに自分でも論理をぶっとばしているなと思うことはあります。

2つ目は、自分が考えることはもうすでに多くの方が考えていて、これをあえて書くということは違う切り口なのですよ~自分は今この立場から語っていますよ~ということが大事なのかな?ということです。ただこれは今ほとんどできていません。

自分でも悪いところはわかってはいたのです。しかし、これをどうやって修正しようかな?と悩んでおりました。

そのような問題意識をもっていたところになんとなくアンテナにひっかかった本をご紹介します。

情報生産者になる

研究に焦点をあてている書籍です。研究とは、アウトプットまでを含めた概念なのですね。

研究とは、まだ誰も解いたことのない問いを立て、証拠を集め、論理を組み立てて、答えを示し、相手を説得するプロセスを指します。

 上野 千鶴子 (著) 出版社: 筑摩書房 発売日: 2018/9/6

図表2-1「研究のプロセス」に以下の記述があります。

研究とは何か?

  1. 問いを立てる
  2. 先行研究を検討する(対象/方法、理論/実証)
  3. 対象を設定する
  4. 方法を採用する
  5. 理論仮説を立てる
  6. 作業仮説を立てる
  7. データを収集する(1次情報/2次情報)
  8. データを分析する
  9. 仮説を検証する(検証/反証)
  10. モデルを構築する
  11. 発見と意義を主張する
  12. 限界と課題を自覚する

構成もこの順番になっています。 それぞれのセクションでためになることが書いてあるのですが、以下特に7以降について書きます。

KJ法とその発展形としての「うえの式質的分析法」

『情報生産者になる』に、KJ法というものがでてきます。

わたしが理解した範囲で要約しますと、KJ法は、

  1. 収集したデータを意味がわかる最小のまとまり(「単語」ではなく「言説」)に分割して(情報ユニットの作成)
  2. 情報ユニットを同じものならまとめて、違うならわけて(メタ情報の作成)
  3. メタ情報同士の論理的つながりを考える(曼荼羅の作成)
  4. 曼荼羅言語化する(物語化)

ここまでで一次情報に基づいている1つのケース分析のレポートができあがります。

さらに『情報生産者になる』では、このKJ法を発展させた「うえの式質的分析法」というものがでてきます。この「うえの式質的分析法」は、本に詳しいのですが、ネットでも無料で公開されています。

生存学研究センター報告書 [27] – 立命館大学生存学研究センター

こちらをご覧になっておお~と思われた方は、ぜひ本書『情報生産者になる』をご購入ください。

上野先生の本を読んだ感想

論理をぶっとばさないで書く達人の文章ってこんなに読みやすいんだ~という。内容は、わたしには素養がないことなので難しいのは難しいのですが(わたしまだ理論仮説と作業仮説の項あまりよくわかってません……)論理的であるからとても読みやすかったです。それにときどきグッとくることが書いてあるんですよね。

マルクス主義フェミニストへの言及などですね。

このあと、こちらの本を読んでいます。めちゃめちゃおもしろいです。

上野千鶴子著(岩波現代文庫) 著者の理論的支柱を示す主著。1986~88年に『思想の科学』誌に連載されたものに,大幅に手を入れ,1990年10月刊行された。文庫版には,400字50枚を超える自著解題が加えられている。

上野先生の本、恥ずかしながらまだ読んだことがありませんでした。わたしは勉強不足なのです。上野先生の授業受けられた方羨ましいなあと思いました。

「育休世代」のジレンマを読み直す

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

 

今、読み直しております。 というか社会学をバックボーンとして書かれている書籍の読み方が変わるのかな?と思っています。

この「育休世代」のジレンマでは、産休・育休の育児支援制度が整った2000年代に総合職として入社し、その後出産をした15人の女性に対するインタビューを実施・分析なさっています。

読み方が変わる部分は、『情報生産者になる』を読んでいないと15人って少ないんじゃない?と思われるんじゃないかと。わたしもそうでした。

そのほかにインタビュー調査の方法について、「クライテリア」とか「質的調査」とか「半構造化面接」とか「当事者研究」とかの用語がでてくるのですが、これは上野本を読まないとわからなかったです。これは単純にわかった!という。

もうひとつは、そのデータからその結論言えるのか?ということは、もっと厳密に問うてよいんだなと。読者側も同じデータをもとになにを読み取れるのか、もっと考えていいんだなというのが『情報生産者になる』を読んでの感想です。

読みながら、ああ~これが「うえの式質的分析法」のマトリックスの実践なのか~と思いながら読んでいたのですが、それはまた違うのかな?

ブロガーから情報生産者へ

ブロガーの方には、コスパのよい本なのではないでしょうか。上野千鶴子先生の本を読んだことがない方にも、まず1冊目に『情報生産者になる』おすすめします。

 上野 千鶴子 (著) 出版社: 筑摩書房 発売日: 2018/9/6

こちらもオススメします。

上野千鶴子著(岩波現代文庫) 著者の理論的支柱を示す主著。1986~88年に『思想の科学』誌に連載されたものに,大幅に手を入れ,1990年10月刊行された。文庫版には,400字50枚を超える自著解題が加えられている。