生活保護制度のイメージアップを図っていこう!という連載記事の第2弾です。
前回(第1回)は、どこから語ろうか?ということで、今年から(平成27年)からスタートした生活困窮者自立支援法による相談事業の紹介と、それ(生活困窮者自立支援法による相談事業)は良い制度なんですけど、生活保護を受けるための必須の相談という訳ではないですよ!ということを書きました。
ただここの論理構造?は分かりにくいと思いますので、できるだけ丁寧に解説して、第3弾、第4弾に繋げようと思います。第2弾にして、生活保護法の説明よりもでかい話になってますけど、まあいいでしょう。こっちから語った方が、より納得していただけると思います。
新宿七夕訴訟は分かるけど、それが正しいっていう根拠はどこにあるの???っていうことを考えるための前提情報
第1回記事に書いていたこと
生活保護法
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
裁判例(新宿七夕訴訟)の一部抜粋
生活保護法4条2項にいう「他の法律に定める扶助」とは,他の法律に定められている扶助で生活保護法による保護として行われる扶助とその内容の全部又は一部を等しくするものをいう
結論
ということは、生活保護を受けるためには生活困窮者自立支援法にもとづく相談を受けなければならないことはない。
生活困窮者自立支援法にもとづく相談は、「他の法律に定める扶助」にあたらないから。
と、ここまでが前回の記事なのですが、
これが「正しい」のかどうかを読者のみなさんに検証していただこう!
というのが今回の記事です。
☆☆☆ポイント☆☆☆
法律(生活保護法)を裁判(新宿七夕訴訟)が修正、限定してますよ!
裁判の流れーーー法律と裁判(判決・裁判例)の関係
第1回記事の解説のために、前提情報として、裁判の流れをご説明します。新宿七夕訴訟を例にとってご説明するので、アレなのですが、ここで言いたいことは、法律と裁判の関係です。
まず、裁判は、具体的な事情がないとスタートできません。新宿七夕訴訟がスタートした具体的事情は、以下の通りです。
当時ホームレス状態にあった方が、新宿区福祉事務所に居宅保護を求めて生活保護申請をしたところ、新宿区福祉事務所の職員から自立支援施設への入所をすすめられ、それを拒否したところ「稼働能力不活用」(生活保護法第4条1項)「他法他施策」(生活保護法第4条2項)を理由に生活保護申請を却下された・・・という事情です。
(※生活保護法第4条1項のハナシは、生活保護を受けるための要件、というものです。当連載記事の第3弾以降に書くことになると思います。)
原告の申立てにより裁判が始まりました。
裁判官は、裁判の中で、生活保護法第4条2項の意味を確定する作業(解釈)を行っています。
生活保護法4条2項にいう「他の法律に定める扶助」とは、・・・をいう(解釈)
次に、裁判官は、(あてはめ)を行います。
新宿区福祉事務所の職員による自立支援施設への入所のおすすめは、生活保護法4条2項にいう「他の法律に定める扶助」ではない(あてはめ)
よって・・・自立支援施設への入所を拒否したことによる「他法他施策」(生活保護法第4条2項)を理由とする生活保護申請を却下した処分は間違いである!・・・よって原告勝ちという結論となったのでした。(もちろん実際の裁判は、他の条文もめちゃめちゃ精緻に検討してありますよ!ここはものすごく単純化してご説明しています)
裁判の中で裁判官が何をしているのか?というと、困った人から具体的事情を聞いて、関係する法律について、解釈で、法律の普遍的適用範囲を宣言して、あてはめで、具体的事情をあてはめて、具体的事情に対する結論を出す、というのが裁判の流れです。
ここまで前提情報でした。
今回、何のハナシをしているのか?
法律を裁判が修正しているんですけどもっていう
裁判官は、裁判の中で、今回で言うと生活保護法第4条2項の意味を確定する作業(解釈)を行っているんですけども
やってることはそんなに複雑な事じゃない!!
我々にだってできるはず!!少なくとも論理を追っかけることはできるはず!!
ということを今回は言いたいのです(だから新宿七夕訴訟が正しいかどうかも、我々が検証できる!と。そうじゃないと我々国民は、納得できませんし。その納得のための、自分で考えるためのツールを提供しよう!という試みです)。
まず裁判では、
具体的事情と
法律と
そのあてはめ
があります。
具体的事情と法律はレヴェルが違うので、そこを混同させちゃいかんというルールは一応あります。
ですので、今、問題としているのは法律(の解釈)のレヴェルのみだということです。
ここで、法律を解釈するためには、条文(今回は4条2項)だけをみても、それは不可能なんです、ということを指摘します。
4条2項には、「他の法律に定める扶助」としか書いてないです。
じゃあどうするか?
ここでやってることは、そんなに複雑なことじゃありません。
ていうか、そもそもコトバを解釈しようとするとき、常に!そのコトバは、正反対の意味を含んでいます(言い切っていいですか?論理学の範囲?)。
ほんでそのコトバは、どっちの意味なんですか?
となると、そのコトバから離れて、違う所から、意味を確定させる根拠をもってくるしかないのですが(これも言い切っていいですか?)
法律の条文の解釈の場合は、どこから意味を確定させる根拠をもってくるかというと、条文あるいは法律全体の目的から、ということになります。この目的を「趣旨」と言ったりします。
やってることは、こんなことです。この「趣旨」は、正義、正しさ、その法律がやろうとしていること、我々も考えることができるもの、もともと与えられているものでないもの、我々が発見していくべきもの、という意味で書いております。
(以下、平成28年1月2日加入)
ずっと何を考えていたのか?といいますと、「新宿七夕訴訟は分かるけど、それが正しいっていう根拠はどこにあるの???」っていうことを考えておりました。結論は、「根拠は、特にない!(もともと与えられているものとしては)」と言っておきます。
ただ法律を学ぶ面白さはここにあると思っています。法律の運用は、あるいは、そもそもの法律それ自体は、間違ってたら間違ってる!と言って良いし、実際そうやって廃止された法律もあります。そして具体的事情に基づいて起された裁判について、裁判官は、法律より大きい「法」の観点から法律の趣旨(根拠)を探し出して、判断しないといけませんし、その判決に対して、今度は、学者の先生や私達普通の国民があーでもないこーでもないと批判論評して、「この問題における正義はどこにあるのだろう?」という共通理解が少しずつできあがっていく、ただそれは「ホントに正しいのか?」と常に問われ続けるものなのだ、というですね。
ここで、私が一部引用した、裁判例をもう一度ご確認ください。ここに趣旨は書いてありません!ここに書いてあるのは、趣旨を受けた結論部分です。法律の文章を読むときのポイントは、ここは趣旨が書いてあるのかな?という読み方をすることです。趣旨は、判別できます。
具体的事情
法律(文言)
趣旨
法律の修正
あてはめ
裁判の原文にあたられるとおもしろいと思います。ぜひ新宿七夕訴訟もチェックしてみてください。
(加入部分おわり)
裁判所に割り振られた権限
(平成28年1月2日タイトル変更)
やってることは、ひとまずご理解いただけたとして、そもそも裁判官がそんなことやっていいの?という、民意に近い法律をなんで裁判官が修正できるわけ?という疑問に対しては、民意に近いということが正しいとなんで言えるわけ?とお答えすることになります。裁判所は、正しい法を発見するシステムとして統治機構に組み込まれている、と書いておきます。(ここはもっとちゃんとした表現があるところなんでしょうけどこの程度で勘弁してください)
まとめ
私が言いたいこと、伝わりますか?私がやりたいことは、生活保護制度のイメージアップです。そのときに、一緒に考えていただく枠組みを提供できたらいいな、と考えた、ということです。情報を「正しい」情報として伝えるのは、なんかダメなような気がする、という。
ただ今回、私の理解不足により、つっこみどころはたくさんある記事になっていると思います。間違いがありましたら、ご指摘ください。勉強しながらアウトプットしていきます。ただ、考え方の問題なので、基本的には、上記のように考えながら、仕事をしております。
私としては、新宿七夕訴訟が、生活保護法第4条2項を限定している、そうして良いと考えた趣旨は、なんなんでしょうかね?ホントにそれは正しいの?などと考えていただけるならば、いいなあ、と。
うまくいってるのかな?文章書くの難しいですね。